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「木洩れ日の家で」 岩波ホールにて [閑話]

P5140016.JPG           モノクロームの美しい映像に描かれる
           婦人のひとり生きる姿――――。
           若き日の甘美な思い出、息子との葛藤 
           そしてしのびよる人生最後の時。
           名女優による卓越した演技とともに贈る、
           現代ポーランド映画の傑作!

 こんな気になるポスターに惹かれて、衝動的に神田神保町の岩波ホールで、久しぶりに映画を観ました。入ってびっくりしたのが満席なこと。加えて、恐らく、その9割以上が団塊世代ないしはそれより多少齢を重ねられているご婦人ばかりであったこと。そのような雰囲気に圧倒されて、前方座席まで歩む勇気なく、最後列に近い場所に席を定めました。
 流れる音楽とモノクロの画面は、ワルシャワ郊外の古びた木造邸宅を映し出し、91歳の主人公アニェラに、愛犬フィラデルフィア(Irish setterでしょうか)が加わり、主人公演じる女優ダスク・シャフラルスカに勝とも劣らぬ名演技を繰り広げておりました。女優シャフラルスカは、実年齢95歳。背筋をしゃきっと伸ばし、時に独り言を、時に社会や人におもねることなく、辛辣に主義主張をはっきり言い切る凛とした姿勢が、演技のための演技ではなく、ご本人の100年に近い年輪と見事にマッチしており、気がつけば観るものの気持ちを虜にしているようでした。余談ながら、この女優の名前は、我々団塊の世代にとっては、東京オリンピック女子体操で金メダルを総なめにした美貌の持ち主チャスラフスカと重なり、親しみを覚える名前でした。思えば、3年後2014年は、あの東京オリンピックから数えて丸50年。何ともう半世紀も経つのだなと、計算している自分がいることに気づきました。
 クライマックスシーンでは思いもよらぬ形で息子に裏切られる主人公アニェラは、それに屈することなく、大胆な発想と行動力で息子の謀り事を妨げ成就させず、母として、女として、最後まで自身の生き方を貫き通す芯の強さ、そして緑深い旧邸の古びたベランダでフィラに看取られながら、静かに最後を迎える生き方、その平和な満ち足りた表情には、静かな共感と感動が広がっているように感じられました。誇り高く尊厳をもって毅然と生涯を全うすることとは...。余韻の残る、素晴らしい映画でした。世の男性諸氏も必見。

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