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茶道(2) [茶道]

最初の職場のお茶室は、休憩室を兼ねた和室で、女子ロッカー室の後ろに位置していた。構造上、和室に入らんとすれば、戸外からノックをし入ることを請い、一端和室に入れば、きぬ擦れの音に雑念を振り払わねばならぬ環境であった。当然のことながら、茶の道の教えを請わんとするその動機を、不純なりと、揶揄する向きも少なからずあった。四十年を超えた今日、少々、胸を張って、不純な動機だけではなく、お茶の魅力への予感を誠実に追い求めていたことを、折々の思い出に絡めながら綴る。
 オランダへトレーニーとして勤務(1973~1975)していたある日、最初の職場でのお茶の恩師が、ロッテルダムに立ち寄られた。宿泊先のホテルにご挨拶にうかがうと、ロビーのソファーに、着物姿でちょこんと正座をして出迎えてくださった。日本から持参した茶箱(点前道具一式を仕込んだ携帯用の箱)で一服差し上げたいと申し出たところ、先生のお部屋に通していただいた。二人でダブルベッドの上に正座し、ボーイにお湯を運ばせ、揺れるベッド上でお茶を差し上げた。心から喜んでくださった笑顔が忘れられない。帰国のご挨拶にお伺いした際には、不治の病の床に臥され、お話をされることは、最早叶わなかった。そんな中、ロッテルダムの一服を喫茶した思い出を懐かしく語り合った。弱った体を何とか起こされんとするお姿は、あの異国で交わした一服が至福の瞬時であったことを全身で表現されておられるようで、胸が熱くなることを禁じえなかった。

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